2010年2月18日木曜日

【東京急行】その4:都電荒川線

 巣鴨でアルバイトをしていたときから荒川線に乗ってみたいと思っていたので、今日は大塚駅より荒川線に乗車して三ノ輪を目指す。一両編成の電車で発射時にチンチンというのが愉快。

 途中都電の操車場で下車してあらかわ遊園に行く。あらかわ遊園というのは日本初の民間の遊園地だそうで大人でも入場料200円、園内には観覧車やら退役した都電の電車やらおかれていて動物も飼育されているという結構なボリュームだ。これが隅田川沿いの住宅街の中にある。しかし今日は午前は雪が降っていたということもあり、文字通り客が一人もいない。入場して一人で観覧車に乗ったりコースターに乗ったり—自転車をこいでレール上を走るのだ—寒くて互いに身を寄せあっている鹿や猿を見てまわる。ほとんど冗談である。従業員も手ぶさたの様子、他の客は私が帰るころに老人と女の子がやっと来たくらいだった。



 あらかわ遊園を出た後はひたすら川沿いを歩いた。びっしり建物で埋まっている閉塞的な空間が広がる都内において、唯一河川敷は周囲を広く見渡せる場所である。川沿いの高速を血管の中を巡る赤血球のように流れて行く車がよく見える。茂っているのは葦である。思い出したように木々が生えている。別段面白い風景でもない。美しい建物やきれいな川があるわけでもない。しかし私はこの手の風景が大好きだ。平凡で飾りっけのない風景は、それ故にそこに住む人達の鼓動を伝え、風景自体がおおいに呼吸し活動している。その中を歩く心地よさは風景との一体感である。



 上手い所で再び都電をつかまえて乗る気だったが、いつまで歩いても出会えず、そのうち腹が空いたので遅い昼を食べることにした。目をつけたのはすすけたレストランで、これが実に愉快だった。おおよそ街歩きの最高の報酬は地元民しか利用しないような年季のこもった喫茶店やレストランを見つけることである。この際味は二の次である。雰囲気が重要だ。店内は一昔前の色調でオールバックの男やしわを額に寄せた婦人が飯を食っている。これがいいのだ。カツを頼んだらコーラがついてきた。



 その後都電の終点の三ノ輪駅まで結局歩いた。三ノ輪周辺は下町の情緒を残しており、商店が身を寄せあっている。ここでなぜかLOを買ってしまって、この後東大に行くつもりだったが面倒くさくなって池袋で画材を買った後帰ってしまった。

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