11月の欧州旅行は博多発上海経由の飛行機でパリ入りする手筈だったので、出発の前日11月3日は博多に泊ることになった。せっかく博多まで出張るからには(大分の人は博多で遊ぶのが何よりの楽しみなのだ)映画でも見ようと思って、まどまぎの「叛逆の物語」を観ることにしたら思わず面白かったので12月に帰国した時、もう一度チケットをとって結局二度観してしまった。映画を二度観するのは初めてのことだった。
叛逆は「傑作(masterpiece)」とか「素晴らしい(fantastic)」とは思わないが、大好きな映画になった。観終わった後、気持がスカッとして何か無性に描きたくなる。物語はいくつかどんでん返しがあって、ちょうど小高い幾つかの丘を登ったり下ったりしながら歩いているように変化があって飽きがない。これは限られた時間の中にうまく詰め込んだものだと思う。あまり内容を詰め込みすぎると、作っている側はよく物語を理解しているからいいものの、初めて観る側は急激な変化についていけないで振り落とされてしまうが、叛逆ではそういうことはなかった。物語の各段階は次の段階にスムースに移行できるようにきちんと描写されている。結果、叛逆は内容の濃い映画になったと思う。
叛逆を観てスカッとするのは物語の前半で感じた不安や疑問が後半できれいに解決されるからだ。前半、始まってからの1/3は観ていて結構居心地が悪い。いきなりナイトメアなるものが出てきて、それを魔法少女たちが楽しそうに相手にして最後に歌を歌って解決してしまう。なんなんだこれ、なんか違うぞ、しかしマミさんの胸は相変わらず大きいな!と感じる。このヘンテコなまどまぎが続くのかと思うと不安になる。しかし観客の不安が最高に高まったタイミングでほむらのフォローが入る。ほむらがこの戦い方に疑問を持つことで、観ている側の不安はひとまず取り除かれ、かわってどのような形で本来の姿に回帰していくのかという好奇心が湧いてくるのだ。物語全体を通してほむらは上手く観客の心をつなぎとめている。きゃーかわいいよほむほむ、ちゅちゅ。
演出やアートワークも気に入った。魔法を扱ったものの中でもまどまぎはかなりの演出の幅を許されていると思う。テレビシリーズから続く物理法則やら遠近法やら整合性やらを無視して抽象的でランダムなもの(アートワーク)を登場させても違和感がない自由度がある。これはとても羨ましい。叛逆の前半では狙ってチグハグにするのだから、さらに束縛は解けてスタッフの好きなようにやれたのではないかと思う。こういったものを見ると刺激されて、ウキウキして何か描きたくなる。ちなみに変身シーンでは杏子が一番かっこよかった。特に腋。
登場人物について。さやか、そして特にマミさんが格段に賢くなっている。ほむほむが仕掛ける前にはキッチンに立ち去る際にきっちしリボンで彼女を繋いでいるし、戦闘ではマスケットを多用し互角に戦う。うーん、こんなにクールなマミさんは初めてだ。たぶん胸にまわしていたエネルギーを頭に使うようにしたのだろう。ところで「円環の理」はマミさん含めみんなが普通に呟いていた。叛逆はマミさんの本格的な復権の物語でもある。さやかは中盤・後半で、特に後半は暴走し始めて観客をおいてきぼりにしがちになったほむらにかわって物語を進行するという、補助的だが重要な役割を任されており、相応に言うことが賢くなっている。もっとも個人的にはさやかはもっとアホで勘違いした子のほうがかわいいと思う。杏子は相変わらずよく喋り、よく食べ、よく動く。さやかとまどかと並ぶ常識人であり、さやかよりも安定していて信頼でき、まどかよりも活動的で行動力がある。彼女には物語がめちゃくちゃにならないように押しとどめる力があり、ほむらが相談相手に選んだのももっともなことだ。ほむらは今回の物語の主人公であり劇場の大半のスポットライトは常に彼女を照らしている。そのスポットライトの光のなかで彼女は主人公にふさわしく主体的にクールに活動していてその姿には一種の風格さえ感じる。そして見事に彼女は物語中観客の心をつかむことに成功している。もっともほむらがその変態性を丸出しにして悪魔になってしまう場面は幾分唐突な気もしたが、散々変態だのストーカーだの言われてきたのでこれはそれほど問題ではないだろう(病んだほむほむもかわいかった)。とにかく、お疲れ様でした!(終盤登場したほむほむ軍の兵隊はくるみ割り人形にして再現したらいい感じだと思うのだけどどうだろう?)。まどかはこの物語には欠かせない存在だが、物語を物語たらしめる役割に徹していて、なんら主体的には行動していない。最初はマミさんに、そして次はほむほむにと一貫してほかの人に振り回されていて、なすがなされるままだ。まどかが好きな人には少し物足りなかったかも知れない。とはいえ戦闘では大活躍しているし、神々しい御姿を拝見できたし、なにより最後にほむらに引きはがされた本来の自身の役割に戻ろうと無意識に感じている様子はいかにもまどっちの性格が出ていて面白い。このほむらから見たら危なっかしいまどかの様子は物語のいい余韻の一つになっている。きゅうべえ。以前から感じていたがきゅうべえはいつも喋りすぎる。黙っていればいいものをぺらぺらと喋るものだから、相手に無用の刺激を与えて損をしてしまっている。相手の気持ちを慮れないのはきゅうべえの最大の欠点であり、その方面についてもう少し訓練した方がいいと思う。「わけがわからないよ」には笑ってしまったが、最後ズタボロになった姿を見た時は因果応報と感じた。百江なぎさはさほど活躍していないが、魔女の時の彼女はほむらの性格を浮き彫りにして引き立てている。ほむらとマミさんが敵対する原因になっていて物語には欠かせない。しかしマミさんの胸に抱かれるとは羨ましい。緑の子。ベッドで枕をパンチするシーンはお茶目でかわいかった。先生は…幸せになって欲しいな。映画館でもらったフィルムの切れ端のようなものにはのけぞって笑う先生の姿が映っていた。忍たまの某敵役首領のようだ。
総じて叛逆はよく出来ていて、機会があればまた観たいと思う。dvdだかなんだかが出たら多分買うだろう。
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