2010年1月30日土曜日

【東京急行】その1:上野

 「東京建築ガイドマップ」を持って上野駅に着いたのは11時の少し前ほどで、少し肌寒くも天気は悪くない様子。改札口より直進して人の間を縫いつつ進むと、あれが安いこれが良いとあちこちから声があがるはアメリカ横町、店先にならぶのは蜜柑やら明太子やら鞄やら、雑多な品がならんでそれでもって一つのモザイク細工。少し進んだのち反転し上野公園へ、まずは階段を登り相変わらず荘厳な頭をお持ちの西郷どんに御挨拶、見下ろせば眼下を車や人が行き交っている。



 上野は美術館、西洋美術館で無料の展示を見たのち北へてくてく歩いて見えるは重厚なる国立科学博物館、入って驚きそこかしこ幼稚園児から高校生で埋まり、皆自由とはこのことぞと云わんばかりに気ままに振る舞っている、必死に子供をまとめんと教師や警備員が苦労の様、なにやら滑稽。散った学生達は三々五々隊伍を組みつつ館内を縦横無尽に蹂躙、課題が出ているのであろう、これはという展示を見つけるとあわてて手持ちのバインダーに文字を書き込んでは、連れの者にこれは猿人だなどとまくしたてる。一体国立というだけあって館内は新館含めかなりの大きさ、展示もミジンコから恐竜まで、和時計やらロケットやらがそれに加勢し、賑やかなる様子アメ横にも遜色とらんと思われん、ほとほと歩き回って知識を吸収し、外に出たときは日が眩しい。



 公園で浮浪者に説教をするキリスト者を横目に見つつ進むと、車道の対岸にそびえるのは東京国立博物館、立派な造りなるも催すは土偶展、 いささか興味に欠け敷地内に入るも有料となれば、次回の展示に期待し此度は遠慮した次第。旧東京音楽学校奏楽堂を目の前に左に行けば東京都美術館、ガイドブック曰く公園の敷地と高層の制約のために大部分が地下にある構造、入館するに際しても階段を下るのは何やら異世界に入る様。今期開催するのはボルゲーゼ展、イタリアのボルゲーゼ家が収集したるコレクションを晒すものなり。この美術館に前回来たのはフェルメール展の時、そのときに比べれば館内はすいている、ゆっくり見て回って更に下れば、東京藝術大の卒業制作を展示している。

 美術館を出たときは15時になろうかというとき、腹はぐうとなるし藝大の大学会館の食堂で食事をとる。食堂にはメニューがない、問答の末カツカレーを頼むと、あげたてのしかし切れてないカツが出て来た。食べるときはスプーンにフォークナイフを使っての大工事。流石に東京藝大、食堂にも何やら幾何学模様のレリーフが刻まれ壁際にはピアノがある。昼も疾うに過ぎて人もまばら、優しく日が差し込む食堂は静々閑々、このなかで颯爽と進みてピアノをポロンポロン弾いたらさぞかし優雅であろうと思っていると、やおら従業員の女が仁王立ちして厨房内でラーメンを食べ出したのには少し驚いた。



 席より振り返ると窓越しにこれまた荘厳な建物、これが国際こども図書館、こどもとつくのにうちの大学図書館より余程立派、生意気に思っているとどうやら国会図書館の一部らしい、もって納得。食堂を出て東京藝術大学大学美術館へ。同美術館では卒業展の真っ最中、絵画から樹脂で固めた立体物まで藝大生の渾身作を展示し、あちらこちらで制作した学生が来館者と談笑している。面白いと思ったものは二次元バーコードにドット絵を合わせたもので、もって携帯で読み取れる絵となっている仕組み、制作者曰く単にバーコードの読み取りでなく絵と会話する楽しみを求めたとのこと、普通のバーコードで線を生かしたイラスト付きバーコードはあれど、二次元では初見の試みデザイン的にも心地がよく感心す。あるいはエッチングの作品群あり、これは不可解な絵で目や手とともに無数の線が、あるいは細いコードと形容した方が正確かも知らん、絡み合っておりあまりの細かさに画面はほとんど真っ黒、思うに制作者の脳髄の神経系もこの絵の何千と絡み合うコードのような組織をなしているに違い無し。この後東京大学にいく予定であったが時間がなく、そこそこに同美術館を辞し、秋葉原でエロゲの広告を絵の参考の為に集めたのちに、帰宅の途についた。

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